モン(Hmong)の村で、いつも泊めていただいているお家のおかあさんは、リバースアップリケの名人であり、モン(Hmong)料理の達人でもあります。そのおかあさんの夢は、いつかモン料理のお店を開くこと。
モン(Hmong)料理の特徴は、とてもシンプルで、まさに”素材の味”をいかした料理です。基本的な調味料は、塩のみ。油でさっと炒めた野菜に塩を少々。
日本人には馴染みのある味付けで、タイ料理のように唐辛子をつかって辛くしたりすることもなく、インド料理のように個性的なスパイスで味付けすることもなく、多くの日本人にとっては、とても食べやすい味付けです。
時には、お肉を少々。この(下写真)さやいんげんと菜っ葉とキャベツの塩炒めは、絶品でした。
”油と塩”、ただそれだけなのに、なんでこんなにおいしいのだろう!と、いつも驚かされるおかあさんのモン(Hmong)料理。私の好みにピッタリの味付けで、ごはん(白米)がすすみます。
モン(Hmong)の人たちは、本当にたくさんのごはん(白米)を食べます。
1枚目の写真のように、お皿に山のように盛られたごはん(白米)だけではまだ足りず、さらにおかわりすることもしばしば…。
食べるものが少なく、おかずが限られていても、自分たちで栽培していたお米だけは収穫してたくさん食べることができた、という時代を経験してきたこともあるでしょう…。野菜のあまり採れない時期、おかずは野菜のスープだけであっても、山盛りのごはん(白米)は欠かせません。
モン(Hmong)料理の特徴は、シンプルな塩味、山盛りのごはん、そして”野菜のスープ”。おかずが2、3品ある時は、その一つは必ず”野菜のスープ”。
でも実際は、”野菜のスープ”と聞いて私たちがイメージするものとは大きく異なり、日本的に言うと、”野菜の煮汁”というものでしょうか…。
菜っ葉やいんげん、カボチャやキャッサバ芋、しばらく煮込んで出来上がりです。これには、塩も入れません。
みなさんもご想像いただけるかと思いますが、お味の方は…、野菜そのものの味です。さすがにこの”モンスープ”がメインの食事の時は、塩をちょっとだけでも入れたらどうかな?と思うこともあったり…。
野菜の煮物のようでもありますが、煮汁を飲むことが目的の料理であり、やはりに煮物というよりも、モンの人たちにとっては、”汁もの”に分類されるものかと思います。
これは、モンのおかあさんたち世代にとっては、”モンのごはん”には欠かせない一品で、これがないと、ごはんを食べた気がしないし、お腹がいっぱいにならない、といいます。
どんな野菜や植物でも作ることができるので、おかずになるものがない時や、米が不作の時でも、この”モンスープ”さえあれば、お腹を満たすことができ、また、冷えてかたくなったごはんにかけて食べることで、ごはんも食べやすくなり、量を増やすこともできる、厳しい自然環境の山岳地で暮らしてきたモン(Hmong)族のこれまでの生活の中で生まれた食文化のひとつなのだと思います。
でも、時には、魚や肉、豆腐をふんだんに使ったスープもご馳走してくれます。これらは、しっかりと塩味がきいて、これまた絶品です。
私がいつもお世話になっているモン(Hmong)の家族は、ラオスからタイへ難民として移住してきて、タイでの生活も、もうだいぶ長くなりますが、伝統的なモンの食事を大切にしている人たちです。
何代にもわたり、タイで生活しているモンの人たちや、今の若者世代では、日々の料理はタイ料理であったり、塩以外に、ナンプラーや唐辛子などを多用し、濃い味付けを好む人たちも多くなってきています。
中国南部の雲南省のモン(Hmong)の人たちの場合も、中華料理風な味付けのものも多くみられました。
人々の食は、それぞれが暮らす国や地域の文化や歴史と深く結びついたものではありますが、母国を追われ、異なる文化の国での生活を余儀なくされた人たちにとって、新しい土地での生活がどれだけ長くなろうとも、子どもの頃から慣れ親しみ、大切にしてきた味は、当時の厳しくつらい生活を思い出すものでもありながら、心の支えであったりするのです。
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