モン族の人たちの身近にあるものから考え出される刺繍の文様
『織り人(Orijin)』の新しい刺繍文様の中には、モン(Hmong)族の人たちの生活や文化に深く結びついたものがたくさんあります。
それは、家の守り神でもある竹製の飾りをモチーフにしていたり、モン族の伝統的な種まきの様子をあらわしていたり、 庭にある木の枝であったり…。
身近にある道端に咲く小さな花や葉っぱであることも多くあります。そして、その中には、ニワトリ小屋の中に敷く葉っぱをモチーフにしたものもあります。
モン(Hmong)族の人たちにとってニワトリは、生活に欠かすことのできないものであり、とても大切にされています。
最近では、モン族の人たちも、町の肉屋さんで肉を買ってくることも多くなってきていますが、大事なお客さんを迎える時や、冠婚葬祭、新年など、イベントや行事、儀式には、ニワトリはなくてはならいないもので、庭先で放し飼いしている様子もまだまだ見られます。
毎朝、ニワトリたちを小屋から出し、餌をやるのが日々の大切な仕事のひとつです。
そんな大切にしているニワトリの小屋の中には、安心して卵を産んでもらうためにシダの葉っぱを敷き詰めます。その時につかうシダの葉をモチーフにした文様がこちらです。
上の写真の文様も、下の写真の文様も、どちらもシダの葉っぱをモチーフにしていますが、違う種類のものなのだそうです。
どちらも食用として用いることもありますが、上の写真の葉っぱは、葉がくるくるっと巻いた感じがとてもきれいな種類で、ニワトリの小屋の中に使うのは、下の写真の葉っぱの方が多いようです。
モン族の人たちにとってニワトリは財産であり、特別なもの。
モン族の家族のところへ通い始めた頃、そのたびにいつも、ニワトリを1羽しめてくれました。
来客には、山盛りのご飯でもてなすことを大切にしているモン族の人たち。モンのお母さんはいつも、「何もなくて・・・」と言いながら、おいしいモン料理を作ってくれます。
ニワトリ1羽をしめるのは、モン族の人たちにとっては、特別な時であり、大切な人をもてなすためであり、ニワトリはその家の財産でもあります。
そんな大切なニワトリをいつも用意してくれていた初めの頃は、本当に申し訳なくて、何度も「ニワトリはいいからね」とお願いしていました。それでも、聞いてはくれなかったお母さんも、何度も何度も通ううちに、だんだんニワトリが食卓にでることは少なくなっていきました。
それからも、お母さんはいつものように、「何もなくて…」と申し訳なさそうにするのですが、日本人と同じように、”同じ釜の飯”を食べたら、”家族”と考えるモン族の人たち。
それは、私が”家族”に近くなった、”特別”ではなくなってきたということの証。私としては、とても嬉しいことなのでした。
いつも、本当においしいご飯をありがとうございます。
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