モン族の民族衣装
「モン(Hmong)族」の人たちは、タイ、ラオス、ベトナム、中国南部など国境をまたいで広範囲に生活しています。同じモン族であっても、いくつかの支族(サブ・グループ)にわかれています。青モン族、白モン族、縞モン族、黒モン族、花モン族・・・、主に、女性の民族衣装の色合いや特徴によって分類されます。
例えば、青モン族(タイ語でモン・キィアオ)は、ろうけつ染めの麻布のスカートが特徴です。藍染めされた青いスカートを履いているので、「青モン族」と呼ばれています。
日本では、モン族をご存知の方は、モン族といえば、この青モン族のスカートの民族衣装をイメージする方が多いかもしれません。
スカートの裾部分には、ぎっしりとクロスステッチ刺繍がほどこされた長い布を縫い付け、藍染めの部分にも、模様に合わせて色布をパッチワークしていきます。
たくさんのプリーツと色あざやかな刺繍やパッチワークは、とてもかわいらしい印象ですが、市場へ向かう青モン族のおばあちゃん(写真上)もばっちりと着こなしています。
最近では、タイの山の方の村でも、普段から民族衣装を着ている人は少なくなってきましたが、それでも、このおばあちゃん世代ですと、まだまだ普段着として民族衣装を着ている方もいらっしゃいます。
この日は村の近くで、モン(Hmong)族の定期市が開かれる日でしたので、そのためにいつもより少しおめかししてきました。
昔は、各村をまわる定期市は、手しごとの腕前を披露する場であり、出逢いの場でもあり、自分で作った民族衣装を身にまとい、とびっきりのおしゃれをして出かけて行ったそうです。
少し若い世代になると、民族衣装を着るのはお正月や儀式の時など、特別な時だけの正装であったりします。
この日(上写真)は、モン(Hmong)族のお正月の日。みんなで民族衣装を着て出かけました。
上の写真の右二人は、青モン族のスカートの民族衣装、一番左の女性は、そで部分にラインの入った上着の縞モン族の民族衣装で、スカートではなくズボンになります。
最近では、同じモン族の中でも、異なるサブ・グループ同士で結婚することも多くなり、その場合は、どちらの民族衣装を着てもよいことになっているそうです。ただその場合、若い世代では、華やかなプリーツスカートの青モン族の民族衣装を着ることが多くなっているように感じます。
*縞モン族は、大きくは白モン族に分類され、言語も方言程度の違いで、民族衣装はスカートではなくズボンという点も同じです。
モン族の民族衣装は後ろ姿も美しく…
モン(Hmong)族の民族衣装は、どのサブ・グループであっても、前からはもちろんですが、後ろからどう見えるかを大切にしたデザインになっています。
後ろに垂らした刺繍の襟、刺繍やアップリケをほどこした腰帯、頭に巻いた布先にも豪華な刺繍が。そして、青モン族のプリーツスカートは、後ろ側からもとても華やかです。(上写真の両端二人)
昔は、ひと針ひと針手刺繍し、パッチワークをほどこし、プリーツを入れ、、自分たちのスカートは自分たちで作るものでした。しかし最近では、村の市場で既製品の民族衣装一式が売られており、お正月前などになると、たくさんの衣装が市場に並びます。
市場で売られる民族衣装の多くは、機械刺繍であったり、プリント生地をつかったものであったりしますが、機械刺繍は手刺繍のものより安価で、プリント生地は麻の藍染め布よりも軽くて洗濯しやすく、人気です。
モン族の民族衣装も手づくりから既製品へ
小さな女の子のスカートも、プリントの化繊生地のプリーツスカート。でも、汚れても簡単に洗えて、薄くて涼しくて、普段使いには既製品の方が重宝するのです。
安価な既製品が多くなることで、手づくりの風合いはどんどん薄れていき、寂しい気がしますが、昔ながらの伝統的な民族衣装は扱いにくく、今の日常的な生活には合わなくなっているのです。それは、日本の着物も同じ道をたどってきました。
モン(Hmong)族の人たちにとって、手づくりした民族衣装はとても高価で貴重なもの。でも実は、重くて暑くて、洗濯も大変で、プリーツをきれいに保っておくのも手間がかかる…。既製品へと変わっていくのも、仕方のないことなのだと思います。
関連書籍はこちら
*Amazon商品ページへリンクします。