タイのモン族のピンクの腰帯

モン(Hmong)族

ミエン族の刺繍の入ったモン(Hmong)族のピンクの腰帯

 ミエン族の人たちが、お正月や結婚式などの正装の際に肩から掛けて使う、両端にミエン族の伝統的な文様が入った細長いピンクの布を、モン(Hmong)族の人たちは腰帯(ベルト)として使っています。

 モン(Hmong)族の人たちのものは、布の両端だけでなく、真ん中あたりにもモン刺繍がほどこされているので、腰に巻いた時のお腹の部分と背中側にも、ちょうど刺繍が見えるようになっており、後ろでしばった先には、ミエン族の刺繍が出るようになっています。

年配の方だと今でも普段着の民族衣装にもピンクの腰帯。

モン(Hmong)族の人たちが使うミエン刺繍の腰帯

 モン(Hmong)族の人たちの刺繍は、基本は✕繰り返すクロスステッチですが、□(四角)を繰り返していくミエン族の刺繍も、見本を見ながらであれば、刺繍のできる大半のモンの人が刺繍することができるといいます。

 『織り人(Orijin)』で刺繍をお願いしているモン族の女性も、今では時々、ミエン族の刺繍もしてくれていますが、異なる民族であるミエン族の刺繍を以前からできていたわけではなく、自分で練習してできるようになったのだといいます。

 モン族の人たちは、自分たちで刺繍して作ることもあるそうですが、ミエンの人から直接買うこともあるといいます。

 このタイプの布は、最近よく使われるようになってきたもので、多くはミシンで刺繍されたものが売られており、それを購入することも増えているようです。

 色は、正月には赤を使うことが多いそうですが、タイ北部でよく見かけるのはピンクが多く、オレンジなど明るい色が好まれるようです。

モン族の民族衣装は、後ろ姿を大事にしたデザイン。

ピンクの腰帯はタイのモン(Hmong)族のもの

 モン(Hmong)族といっても、青モン族や白モン族、黒モン族など、サブ・グループごとにも民族衣装が異なりますが、腰帯(ベルト)はモン女性の民族衣装には欠かせないもので、ラオスのモン族の人たちは、光沢のあるサテン生地の腰布を使いますが、このミエン族の刺繍の入ったピンクも腰帯は、タイにいるモン族の人たちが好んで使う傾向にあります。

 タイ国内には、大きく分けて、もともと長い間タイで生活していたモン族の人たちと、ラオスから難民キャンプ経て、タイへ定住した人たちなど、近隣諸国から移住してきた人たちがいます。

 『織り人(Orijin)』でお願いしているのは、ラオスから難民としてタイの難民キャンプで数年間生活したあと、親戚や知人をたより、タイ北部のモン族の村で生活するようになった人たちで、難民キャンプにいたモン族の人たちは、このピンクの腰帯を使いませんでしたが、今のタイの新しいモン族の村では、このピンクの腰帯が一般的なため、今では、使うこともあるようです。

タイ北部を移動中に出逢ったモンのあばあさま。
すてきな刺繍の入った腰帯の写真を撮らせてもらいました。

刺繍の模様や色合いからわかる出身地

 タイのモン族の人たちは、なぜかピンクが大好きで、タイにもともといるモン族の人たちの民族衣装の刺繍は、男女ともに、全体的にピンク色を使うことが多いです。

 写真を撮らせていただいた年配のおばさまも、このピンクの腰帯を普段着として使っていましたので、このモンの村も、もともとタイに住むモンの人たちの村だと思われます。

 一見同じように見える民族衣装も、刺繍の文様の違いや配置、色合いなどを見ると、どこの出身なのか、どこの村(地域)に住んでいるのかなどがわかるのです。

後ろから見える手の込んだ刺繍はとてもすてき。

*写真はすべてタイ北部のモン(Hmong)族の村にて。筆者撮影。