「国際人種差別撤廃デー」に考える

いろいろな話

3月21日は「国際人種差別撤廃デー」

 南アフリカのシャープビルで、人種隔離政策(アパルトヘイト)に反対するデモ行進に対して警察官が発砲し、69人が死亡した「シャープビル虐殺事件」が起こった1966年3月21日は、人種差別撤廃の記念日として、1966年の国連総会で、「国際人種差別撤廃デー:International Day for the Elimination of Racial Discrimination」と制定されました。*1)

*1)フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』参考

 しかしながら皮肉にも、コロナ禍の今、世界中で様々な形で問題が起こっています。

 人の中にある差別的な気持ちや意識は、その本人自身が自覚していなくても、無意識の心の奥底にあり、思ってもいない時に、さまざまな形になって表にでてくる厄介なものです。そして、そういう時、自分の考えや発言が差別にあたるのかどうか、ということがわからない、気づかないということも多く、話をさらに複雑にしてしまいます。

芸術や手しごとの文化がもつ力

 心の奥底にあるものを変えることは難しく、消し去ることはなかなか困難です…。それでも、芸術や手しごとの文化には、一瞬で、それらを根底から変える力があると私は思っています。

 それぞれの民族の魅力的な文様を見たとき、細かく複雑な手刺繍を見たとき、何重にも重なる重厚なアップリケを見たとき…、思わず心の底から“わ〜、すごい!”と思う。そう思った瞬間、差別的な気持ちや人を下にみる気持ちは消えていくと思っています。

 それはもちろん、どんなことでも、どんなものでもいいのですが、心から“うわっ!”と思うもの、そういう心動かされるものに出逢ったとき、人はそのものや相手を自分との比較対象からはずすことができるようになると思っています。

 タイなど東南アジアの国々では、モン(Hmong)族をはじめ多くの山岳(少数)民族の人たちが暮らし、その多くの人たちが、幼い時から今までの中で、屈辱的な思いをした経験をもっています。

 それでも最近では、タイの若い人たちの間で、モン族の人たちの刺繍の洋服やバッグが人気になったり、アカ族の人たちのコーヒーショップに行列ができたりしています。その彼らは、モン族やアカ族の歴史をあまりよく知らないかもしれません。でも、モン族の人たちが作ったものが好き。始まりは、ただそれだけでもいいのかなとも思っています。

 もちろん、きちんとした歴史を学ぶことは大事ですが、誰かが言った表面的な話や、何かでちらっと見た出来事だけで判断したり、それが全てだと思ってしまうよりも、モン族の刺繍やアップリケを見て、“これ好きだな〜”と心が動いたこと、そういうことが、まずは一番大切なことなのかなと感じています。

 そういう人の心を動かすものを作りたい、そして、それが民族出身の彼らの誇りと自信となるように。それが、『織り人(Orijin)』の望みです。

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