カレン族の「腰機」織り

カレン(Karen)族

カレン族の「腰機(こしばた)」の機織り

「機織り」は、世界各地で、すべての民族でおこなわれているもので、それぞれの地域、それぞれの民族によって異なる「機織り機」がつくられました。
カレン族の機織りは、床に座り、足を突っ張り、腰に腰帯をまわして経(たて)糸の張りを腰で調整しながら織っていくもので、「腰機(こしばた)」と呼ばれています。
また、「いざり*1」ながら織り進めていくために、「居坐機(いざりばた)」とも呼ばれることもあります。

*1 「居坐る」は、「躄る・膝行る」1.座ったまま移動する。足を立てず、膝ひざをついて前へ進む、2.物が置かれた場所からずれ動く、という意味。

カレン族の腰機_織り人(Orijin)

現存する数少ない「腰機」の織り

「腰機(こしばた)」または「居坐機(いざりばた)」は、機織りの中でも最も原始的な織りと考えられており、「原始機(げんしばた)」とも呼ばれることがあります。

「腰機」では、輪にした糸束の片側を、壁や柱などに結び付け、もう一方を腰帯でつり、織っていくため、仕上がりは輪の状態になっており、輪の長さ分、腰幅の布しか織ることができません。

それでも、世界的に、今でもなお、最も原始的といわれる「腰機」が現存しているのは、「腰機」のよさがあるからです。
例えば、経(たて)糸を自分の腰にまわし、経糸の張力を調節することができるため、カレン族伝統の織り布の中には、「腰機」でしか織ることができない織り柄があります。
太めの綿糸でざっくりと織られるシンプルなカレン族伝統の織り布も、「腰機」ならではの独特の風合いがあり、大好きな布のひとつです。

日本では、北海道のアイヌの人たちの民族衣装の「アットゥシ織り」、沖縄県うるま市の石川伊波に古くから伝わる「伊波メンサー織り」、八丈島の「カッペタ織り」など、限られた地域でみられるだけとなっています。

カレン族の腰機_織り人(Orijin)

カレン族の腰機_織り人(Orijin)

カレン族の民族衣装の浮き織り文様

織り手のおばさまの着ているカレン族の民族衣装のブラウスは、腰のあたりのピンクの文様が刺繍のように浮き上がってみえるのですが、「腰機」で織ることで、こうした浮き織り文様をつくり出すことができるのです。

肩から腰あたりまでの紺布の無地の部分と、ピンクの浮き織り文様の部分は縫い合わせているのではなく、つながった一枚の布になっています。
ただ、「腰機」で織られる布は、腰幅より広いものは織れないため、カレン族のブラウスは、左右で縫い合わせ、首の部分だけ縫わずにあけておく「貫頭衣(かんとうい)」になっています。

この浮き織り文様を織るためには、文様に合わせて、経(たて)糸の間に色糸を通していきます。
そのために、白い糸のかかった棒がいくつも準備されており、これを順番に持ち上げ、その間に色糸を織り込んでいくことで、きれいな浮き文様ができあがっていくのです。

織る際には、この棒を動かす順番を間違えてしまうと、文様がくずれてしまいますので、とても集中力が必要となりますが、経糸の本数を数え、この白い糸を準備するのは、さらに根気のいる作業です。

カレン族の腰機_織り人(Orijin)

カレン族の住居は、モン(Hmong)族の土間とは異なり高床式住居で、「高機(たかばた)」の場合は1階のスペースに、「腰機」は2階の居住スペースの片隅に設置されます。

下の写真手前にはしごがあり、はしごを上っていくと、部屋の入口前には居間のような共有スペースがあり、そこで「腰機」をしている様子をよく見かけます。

カレン族の腰機_織り人(Orijin)

「腰機」のゆくえ・・・

時代と共に、人々の「衣」の流行りが変わっていき、織られる布も変化していきます。
そして、その時代に必要な布に合わせて、織り機も変化していきます。

日本で、「腰機」の織り文化がなくなりつつあるように、カレン族の「腰機」も、民族衣装が変化していったり、着ることがなくなってしまった時、その姿を消してしまうのかもしれません・・・。

カレン族の腰機_織り人(Orijin)

*写真はすべて筆者撮影(2015年9月)/タイ北部カレン族の村にて