UNHCR WILL2LIVE Cinema 「アイ・アム・ロヒンギャ」

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 先日、「UNHCR WILL2LIVE Cinema パートナーズ」に登録している法政大学が主催する映画上映会へ、「アイ・アム・ロヒンギャ」を観に行ってきました。

 「UNHCR WILL2LIVE Cinema パートナーズ」とは、2015年からスタートした、難民映画祭の上映作品を学校が主催者となり上映する「学校パートナーズ」のことで、2018年からは、その枠を学校だけでなく、企業や団体へも広げ、名称を「UNHCR WILL2LIVE Cinema」と変更し、開催しているものです。

 「アイ・アム・ロヒンギャ」は、昨年2018年の難民映画祭で上映されたもので、ミャンマー(ビルマ)政府や国内の多数派である仏教徒から迫害を受け、国境を越え隣国バングラデシュへ逃れたロヒンギャの若者たちが、第3国定住先のカナダで、避難してくるまでの壮絶な過去の経験やトラウマ、アイデンティティへの葛藤、そしてロヒンギャの現実を、演劇を通して、世界へ伝えていく様子を映したドキュメンタリー映画です。

 先日ちょうど、難民として移住した第3国で、作家として、難民の物語をつづっている人たちの本を読んだばかりで、この映画を観て、小さな頃に、親や親戚などの大人と共に、難民として他の国で生活していかなくてはならなくなった子どもたちの、苦しみや心の葛藤が、その本の登場人物たちと同様のものであることを感じました。

 親世代とは異なり、新しい環境でも、その国の言葉、例えば英語を流暢に話し、新しい文化へも大きな疑問もなく馴染み、普段の生活の中での言葉の問題やカルチャーショックなどもそれほど受けずに同化していけているように見える子どもたち世代であっても、成長するにつれ、自分は何者なのか、なぜ母国を追われたのか、難民とはなんなのか…、様々な疑問や葛藤が大きくなり、それを乗り越えるために、文章であったり、演技であったり、自分の想いを表現できるものがあるということが、とても大事なことなのだということを感じました。

 『織り人(Orijin)』のつくり手さんの中には、内戦の続くラオスからタイの難民キャンプへ避難すことになり、その後、タイ国内へタイ人として定住することになった女性たちがいます。

 難民キャンプ内では、海外からの国際NGOなどの支援により、刺繍やアップリケのベッドカバーやタペストリーなどが海外へ売られるようになり、貴重な現金収入のひとつになっていました。

 でもそれは、単に現金収入を得る手段ということだけでなく、モン(Hmong)族としての誇りを見失うことなく、先の見えない難民キャンプでの生活を耐えていくために、重要な役割を果たしていたと思うのです。

 モン(Hmong)族の女性たちにとって、役者や作家となった難民だった人たちと同じように、刺繍やアップリケを作り続けることは、自分たちが難民だったという過去を乗り越え、”自分たちはモン族”だというアイデンティティを表現する手段であり、モン族としての誇りを持ち続けさせてくれるものだと思っています。

 そして、『織り人(Orijin)』は、それぞれの民族出身の人たちが、自分たちを表現できる場を提供するという役割を果たすことができたらいいなと思っています。

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*本記事のアイキャッチ画像は、フリー写真素材サイトPixabayより利用させていただいています。