ベトナム黒モン族の藍染め染料(泥藍)のつくり方
ベトナム北部の黒モン(Hmong)族の村を訪れた時、大きな藍樽が置かれていました。
藍染めを始めるには、まず染料をつくらなくてはなりません。
藍の葉を摘んできて、3日ほど水につけておきます。
藍の色素(インジゴ)になる物質が溶け出してきたところで、葉をすべて取り出します。
その中に、石灰を入れ、よく撹拌(かくはん)していきます。
勢いよくかき回し、空気を入れ込むようにすくい上げながら、よく撹拌していくと青い泡(藍の華)がたってきます。
その泡が徐々に濃くなってきたところで、しばらくおきます。
数日おくと、生成された藍の色素(インジゴ)が泥のように沈殿します。
その上澄み液を捨て、底に沈殿してできたものが、「泥藍」「沈殿藍」と呼ばれる藍染めのもとの染料になります。
布を染める準備「藍建て」と「染め」
こうして時間をかけてでき上がった泥藍を、水に溶かして藍染めの染液をつくり、染められる状態にしていくことを「藍建て(あいだて)」といいます。
「藍建て」にはまず、普段つかっているかまどの木灰を水と混ぜ、布でこした灰汁を泥藍とよく混ぜ合わせていきます。
表面に青い泡が立ちはじめ、藍のにおいが強くなってくると染められる状態になります。
藍の色素(インジゴ)は水に溶けないため、そのままでは布を染めることができません。
灰汁を入れてアルカリ性にすることで水溶性になり、布に入り込み染まるのです。
藍のアルカリ性の染液に浸け、取り出し空気に触れさせ酸化させ、また不溶性の藍の色素(インジゴ)に戻ることで青色に発色します。
初めの1、2回は薄い水色ですが、染液に浸け、取り出し酸化させる、という工程を繰り返すことで、濃い藍色になっていきます。
藍色の濃淡は、この繰り返しの回数によって調整されます。
黒モン(Hmong)族の人たちの民族衣装は、一見すると真っ黒に見えます。
この真っ黒に近い藍色を出すためには、浸して干して、という工程を何十回と繰り返していかなくてはならないということです。
藍の葉を育てる
最近では、生の藍の葉から染料をつくることも少なくなってきましたが、この村を訪れた当時(2005年)にはまだ、家のまわりで栽培した藍の葉を採取して、染めていました。
麻布が織り上がるまでの工程も、長い時間がかかりますが、藍の葉を栽培して染料をつくり染めていくのも大変な手間がかかります。
そのため、最近では、粉になった藍の染料を買ってきて染めていることが多くなってきています。
染液をつくるのも簡単で、染める回数も、何度も何度も繰り返し染めることなく、濃い藍色を出すことができるようになります。
上の写真の藍染めの布が干してある裏手に、いろいろな野菜や薬草が植えられている家庭菜園のようなスペースがあり、そのまわりに、藍も植えられていたそうですが、すでに藍染めの準備のために採ってしまったあととのことでした。
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