ベトナム黒モン族の麻布の織り

麻布と藍染め

麻糸づくりの季節の機織り機

 ベトナム北部の黒モン(Hmong)族の村を訪れた時、その時期は、麻糸づくりの季節で、あちらこちらで、歩きながら、おしゃべりをしながら・・・、糸績みしている姿を見かけました。

 でも、その時期は、みな麻糸づくりに忙しく、機織りをしている人はおらず、織り機は、家の軒下や台所に立てかけられたままで、洗濯物が干され、ちょっとしたした物かけになっていたり、子どもたちの遊び道具になっていたりしました。

 機織りの季節には、組み立てられ、織りかけの麻布がおかれ、農作業や家仕事の合間に、織っていくのでしょう。

ベトナム黒モン(Hmong)族の藍染め麻布_織り人(Orijin)

民族、地域によって異なる機織り機

 同じモン(Hmong)族であっても、国や地域、サブグループが異なると、その織り機も異なってきます。

タイの青モン族の村で見かけた織り機のシャトル(杼)は、とても大きく、緯(よこ)糸を通すだけでなく、緯糸を打ち込み整える「筬(おさ)」の役目も果たしていましたが、ベトナム北部の黒モン族の人たちのものは、糸巻きを中に入れた小さめのものでした(一番上の写真)。

ベトナム黒モン(Hmong)族の藍染め麻布_織り人(Orijin)

ベトナム北部の黒モン族の麻布

 残念ながら、機織りの様子は見ることができなかったのですが、織り上がったばかりの麻布を見せていただきました。シルクのような光沢のある麻布で、本当にきれいな布でした。

 麻の茎から取り出した繊維は、枯れ草の色をしていますが、3日ほど、灰と一緒に煮ることで、白く柔らかくなるのです。

 黒モン(Hmong)族の人たちは、その呼び名の通り、黒い民族衣装を身にまとっていますが、この「黒い布」は、本当の黒ではなく、藍で何十回も染めた濃紺の藍色の布なのです。
 ですので、黒モン族の人たちが、このシルクのような白い麻布を、このまま使うことはなく、藍に染められていくのですが、あまりにもきれいで、染めてしまうのがちょっともったいないような気がしてしまいました。

ベトナム黒モン(Hmong)族の藍染め麻布_織り人(Orijin)

*写真はすべて筆者撮影(2005年4月)/ ベトナム北部黒モン(Hmong)族の村にて