モン族の藍染め

麻布と藍染め

モン族の藍染めの麻布

 モン(Hmong)族の麻布は、白モン族のプリーツスカートのように、生成りの白い色のまま使うこともありますが、藍に染めて使うことが多いです。

 蜜蝋で模様を描き、藍に染めた布は、青モン族のプリーツスカートに、2枚を縦に縫い合わせて、後ろ側に刺繍の入った襟を付けた黒モン族のロングベストなど、モン族のサブグループの多くの民族衣装は、藍染めの布をもとにつくられています。

モン(Hmong)族の麻布の藍染め_織り人(Orijin)

 家の軒先などに、藍の染液の入った樽やバケツが置かれ、その中に麻布を浸し、染めていきます。

モン(Hmong)族の麻布の藍染め_織り人(Orijin)

藍染めの染料

 昔は、麻布づくりをしている家では、家庭菜園のように、庭の片隅で藍を栽培し、葉を発酵させた染料で染めていました。

 この日、お邪魔したお家では、今ではもう藍の葉から染料をつくることはしていないということでしたが、毎年、少しずつですが、栽培し続けているのだそうです。

モン(Hmong)族の麻布の藍染め_織り人(Orijin)

 藍の染料づくり(藍建て)は、麻布づくりと同じように、気の遠くなるような時間と手間のかかる作業で、現在では、粉になって売られている染料をつかうことが多くなっています。

モン(Hmong)族の麻布の藍染め_織り人(Orijin)

 藍の染料に浸し、十分に色が染まったあとは、家のまわりで乾かしていきますが、藍染めをしている村で見かける、藍染め布干しの風景は、とても絵になります。

モン(Hmong)族の麻布の藍染め_織り人(Orijin)

天然染料から化学染料への変化

 安価な粉の化学染料が売られるようになると、天然の藍染めの布は、ほとんど見かけることがなくなり、市場で出逢えたとしても、相当な値が付けられていることもあります。

 天然の藍で、モン(Hmong)族の人たちが好む黒に近い濃紺の藍色にするためには、何度も何度も、時間をかけて染めていかなくてなりません。
藍染めだけでなく、すべての草木染めでいえることですが、化学染料をつかうことで、簡単に染液を作ることができるだけでなく、1回染めるだけで濃い色を出すことができるため、好まれるようなってきました。

モン(Hmong)族の麻布の藍染め_織り人(Orijin)

 天然染料から化学染料への変化は、モン(Hmong)族の藍染めにだけみられることではなく、カレン族の人たちの間でも同じように化学染料が好まれているのですが、これは、染める側の都合だけではなく、つかう(お客さま)側の希望(需要)の面も大きいのだと思います。

 草木染めの布を探していた時、ある村で染めをしていたカレン族のおばさまに話をお聞きすると、地元では草木染めの布は、色がはっきりしていない(くすんでいるように見える)ので売れなくなってきているというのです。そのため、天然染料で染めている村でも、色をはっきりさせ、模様をくっきり浮き上がらせるために、”あえて”化学染料を混ぜているというのです。
また、天然染料の場合は、色落ちしやすく色の変化も大きいので、色落ちしにくい化学染料で染められた布の方が好まれるのです。

 化学染料と天然染料とでは、染め上がった布をひと目見れば、その違いが明らかで、淡い色合いが天然染料の”よさ”なのですが、使う側の人たち自身がそれを好まなければ、それは変化し、需要がなくなれば消えていってしまうのもしょうがないことなのだと思うのです。

 そして、その傾向が過ぎると、天然染料の”よさ”が見直される時が、またやってくるのです。

モン(Hmong)族の麻布の藍染め_織り人(Orijin)

*写真はすべて筆者撮影(2017年5月)
タイ北西部モン(Hmong)族の村にて

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