リス族の新年のお祭りと儀式の場所

リス(Lisu)族

2018年2月の旧正月(16日)の頃、手織り布を仕入れにタイ北西部の町に滞在していた時、ちょうどリス族の新年のお祭りがある(らしい…)という話を聞き、どこの村で開催されるのかは、はっきりわからないまま、いつものように、”行ってみたら見つかるだろう”と、お祭りがあるらしいリス族の村の最寄りの町へとソンテオ(乗り合いバス)に乗り込みました。

ソンテオの運転手さんに、”このあたりでリス族のお祭りがあるらしいんのですが・・・”と尋ねると、それらしい方へ車を走らせてくれました。
そのあたりの近隣の人たちも詳しくはわからないようで、いろいろな人に聞きながら、おそらくこの村だろう、というリス族の村の入り口で降ろしてもらいました。

降りてからさらに、通りがかる人に尋ねながら歩いていると、リス族の民族衣装を着たおばあちゃんに遭遇。声をかけてみましたが、言葉が通じず、そのままなんとなく一緒に歩いて行くと、今度は、リス族の民族衣装を着た子どもたちをのせた車が隣りを通り過ぎていきました。

時々、リス族の民族衣装を着た人たちとすれ違うので、きっとこの村で間違いないだろうと思いつつも、人通りも少なく、新年のお祭りなのに、こんなに静かなのだろうか・・・と不思議に思いながら、車の向かった方へ歩いていきました。

その車が到着したのは、村の集会場のようなところでした。
会場はここで間違いないようで、次々と、人々が集まりはじめました。

おとなも子どもも、カラフルなリス族の民族衣装に身を包み、男性は楽器を手に集まってきました。

到着した会場は、まだお祭りの準備中で、そこで準備していた女性が、もう少ししてから来るといいよ、と村の中を少し案内してくれました。

まず、会場近くのその女性の家へ連れていってくれました。
離れた町の学校に通っている娘さんは、新年のお祭りのために帰省中とのことでした。

家の前には、松の木の枝を置き、そこにお金を飾り付けます。
家の入口には、赤い紙に金色の文字で書かれた漢字のお札と赤い提灯が飾られ、中国の村にきているような雰囲気です。

リス族はもともと、チベット南部の山麓あたりを起源としているといわれていますが、中国の怒江(ミャンマーではサルウィン川)に沿って南下し、現在は、中国の雲南省、ミャンマーのカチン州、インドのアッサム州、タイ北部の4か国にまたがって生活しています。

移動を繰り返す中で、中国文化の影響を強く受け、今でも中国語を話せる人も多いといいます。
新年も、中国の伝統にのっとり、中国の旧正月に合わせてお祭りが執り行われています。

タイ国内に住む山岳少数民族の中では、中国文化(漢民族文化)の影響をもっとも強く受けている民族としても知られる。
数の数え方や名詞などリス語のボキャブラリーの約3割は中国語からの流用といわれるし、父系制でクラン(氏族集団)としてのまとまりを重視すること、旧暦の正月を祝うこと、祖霊を祀る祭壇の形状、地床式の家、箸を使って食事することなど、漢民族と共通する文化・習慣が数多くある。

*チェンマイ発!ちょっとディープな北タイ日本語情報誌CHAO『ちゃ~お』の記事より

現在は、ミャンマーを流れるサルウィン川に沿って、北は、中国の怒江リス族自治州、ミャンマーのカチン州、インドのアッサム州あたりから、南はタイのターク県やスコータイ県までの長い帯状の一帯に、中国、ミャンマー、タイ、インドの4か国の国境をまたいで居住している。

中国に約55万6千人(1995年度中国政府統計)、ミャンマーに推定25万人(1984年)、タイには31万人強(1995年度政府労働社会福祉省公共福祉局統計)、インドの統計などを含めれば、およそ100万人以上と思われる。

参考文献:東南アジア研究35巻4号 1998年3月「国境と少数民族-タイ北部リス族における移住と国境認識-綾部真雄氏

村から少し出ると、まわりは一面畑地帯。
その中を歩いて行くと、少し小高くなった丘の上に、こんもりと木が茂った場所が見えました。

屋敷林かな?と思って近づいていくと、その木々の中には、祠があり、新年のお祭りの前に、ここでリス族の伝統儀式をおこなうのだそう。
その日も、朝から儀式をおこなっていたそうで、その儀式が終わり、みんなお祭り会場に集まりはじめている頃だということでした。

中に入ることは許されませんでしたが、離れたところからの写真は大丈夫とのことで撮影させてもらいました。
祠の前には、各住居の前にあったように松の木の枝が立てられ、お札などを焼く炉もありました。

今でもすべて、リス族の伝統にのっとり、新年の行事が行われています。

リス族に人たちは、とても保守的で、外からの人をすぐには受け入れてくれないという話も聞いたことがありましたが、このリス族の村でも他の村と同じように、”わざわざこんな遠くまできてくれて…”と、こうしていろいろと案内してくださることがよくあります。

彼らにとっては日常のことすべてに興味津々の”外国人”に、逆に関心をもってくださっているのかなと思います。
お祭りの準備に忙しいときにお邪魔してしまい、恐縮しながらも、初めてのリス族のお祭りを見させてもらえることにわくわくしながら、お祭り会場へ再び向かいました。

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