モン族の麻の刈り入れ

麻布と藍染め

麻栽培をしているモン族の村との出逢い

 昔、モン(Hmong)族の民族衣装は、自分たちで育てた麻からつくっていましたが、今では麻布を作っている村も少なくなってきました。麻布の代わりに、綿布をつかったり、さらに安価な中国などから入ってくる化繊の布をつかって作られることも多くなりました。

 そんな中でも、まだ、タイ北部の村で、麻の栽培をしている村があると聞き、行ってみることにしました。

 その村を探している時に、偶然乗ったソンテウ(乗り合いトラック)の運転手さんがモン族の民族衣装を着ており、麻布を作っている村を知らないか、とたずねてみたところ、自分の家で作っているよ、というのです。

 それは、事前に聞いていた村ではなかったのですが、その時に乗っていた乗客のみなさんを送り届けた後、運転手さんの村へ連れて行ってもらうことになったのです。それが、麻づくりのモンの村とのうれしい出逢いでした。

 その日は、麻の刈り入れも終わってしまった時期でしたので、村の様子を見せてもらい、いろいろとお話をお聞きするだけとなりましたが、それから数ヶ月後、麻の刈り入れ時期(9月半ば)に、改めて様子を見に来させてもらうことになりました。

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ_織り人(Orijin)

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ

 その村は、先祖代々、麻の栽培をおこなっている村でしたが、今では自家用に少量つくっているだけという人がほとんどのようでした。

 次の年に必要になる布の量を予測して、毎年、どのくらい麻を栽培するか決めるのだそうです。ソンテウの運転手さんのお家も、高齢のお母さまが毎年、ご自分と家族のために必要な分をつくっているだけということで、麻畑もそんなに広くはありませんでしたが、それでも、暑い日差しの中での麻の刈り入れ作業は大変なものです。

 まずは、自分の背丈以上になった麻を茎の根元から切っていきます。左手で茎を束ね、右手のナタですぱっと切るのですが、慣れないとなかなか上手に切れず、切り口もきれいに切れません。

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ_織り人(Orijin)

 刈り取った麻は、茎の太さごとに分けておきながら、すべての麻を刈り取ります。それから、葉っぱを取り除き、また太さによって分けておきます。

 刈り取る際に、成長のよいものは何本か、次の年に撒くための種取り用に残しておきます。

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ_織り人(Orijin)

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ_織り人(Orijin)

 葉っぱを全部取り除いたら、太さごとに束ねて、麻の茎をつかってしっかりと縛り、ソンテオ(乗り合いトラック)に積んで家に運びます。

 この後、糸になるまでには、気の遠くなるような手間がかかり、布に織り上がるまでには、まだまだ長い時間がかかります。

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ_織り人(Orijin)

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ_織り人(Orijin)

モン族の麻布のこれから

 モン(Hmong)族の人たちにとって、麻布はとても神聖なものであり、民族衣装や儀式においても、欠かすことのできない大切なものでした。しかし今では、麻の需要も少なく、畑の規模も小さくなり、自家用に必要な分を栽培しているだけであったり、栽培自体をやめてしまった村もたくさんあります。

 麻の栽培から麻布をつくるまでには、本当に長い長い時間がかかります。どれだけの手間暇をかけても、麻栽培だけで食べていくことはなかなか難しくなり、他の仕事をしながら続けていくことは困難で、それを引き継いでいく次世代の担い手がいないという現状があります。

 私は、モン族の麻布が好きで、今の活動を始めるきっかけになったのもモン族の麻布でした。少しでも長く、モン族の麻布を見ていられるようにと、今は、モン族の麻布とモン族のアップリケや刺繍を合わせた製品づくりに取り組んでいます。

モン(Hmong)族の麻の刈り入れ_織り人(Orijin)

*刈り入れにうかがったのは2017年9月19日
*写真はすべて筆者撮影/タイ北西部モン(Hmong)族の村にて