モン族の麻布織り

麻布と藍染め

モン(Hmong)族の麻糸の織り

 麻の栽培から収穫、糸づくりまでの長い時間を経て、やっと機織りを始めることができるようになります。通常は、農作業が一段落した農閑期におこなうことが多く、時間を見つけては、織っていきます。

 家の中や軒先に織り機を設置しますが、モン(Hmong)族の伝統的な家は、窓がない(少ない)ため、家の中は昼間でも薄暗く、機織りをするのには向いておらず、軒先に織り機をおいて機織りをすることが多いです。

 一軒目のお家は、家の中に織り機を置いていましたが、お邪魔したのは天気のよい昼間でしたが、電球をつけないと暗くて、手元が見えないほどでした。

モン(Hmong)族の麻布織り_織り人(Orijin)

モン族の機織り機

 以前は、織り機は自分たちで作るものでしたが、最近では購入することも多くなってきているようですが、この村ではまだ、今でも、織り機は自分たちで作っている人たちもおり、この日、織りの様子を見せてくださったおばさまの織り機も、旦那さんが作ってくれたものだそうです。

 昔はすべて、木材や竹で作っていましたが、最近は、筬(おさ)の部分に青いパイプを使うことが多いようで、この村と近くの村でも、同じようにプラスチックのパイプをつかった織り機でした。

モン(Hmong)族のお麻布織り_織り人(Orijin)

 モン(Hmong)族の「シャトル(杼)」は、よく見かけるものよりもかなり大きく、緯(よこ)糸を通すだけでなく、緯糸を打ち込み整える「筬(おさ)」の役目も果たしています。

 両側が細くなっており、両手で手前に引っ張るのに適した形になっています。

モン(Hmong)族のお麻布織り_織り人(Orijin)

モン族の「地機(じばた)」織り

モン(Hmong)族の織り機は、大量に幅の広い布を織ることができる「高機(たかばた)」でもなく、カレン族の伝統的な「腰機(こしばた)」や「居坐機(いざりばた)」のように地面に座って織る織り機とも異なり、椅子に座って織りますが、「腰機」と同じように腰帯を腰にまわし、自分の体で経(たて)糸の張りを調節しながら織っていくものです。

 「腰機」や「いざり機」で織る場合、布幅は腰の幅までで、経(たて)糸の長さも固定されているため、幅も長さも決まった布しか織ることができないのに対して、モン族の織り機の場合、民族衣装のプリーツスカートをつくれるほどの長い布を織るために、巻きとれるように改良されたものです。

*これを「地機(じばた)」と呼び、「腰機」など最も原始的な織りとは区別することもあるようですが、「腰機」「「居坐機」「原始機」「地機」を同じものとしていることも多いようです。

 「地機」も「腰機」も、自分の体を織り機の一部とみなして、腰で経(たて)糸の張りを調整しながら織っていくため、長時間の機織りは、腰への負担も大きく、空いた時間を見つけて、少しずつ織り進めていきます。

 カレン族の「腰機」の布もそうですが、腰幅以上のものは織ることができないため、モン族のプリーツスカートも、刺繍部分と藍染め部分と2枚の腰幅の布を上下に縫い合わせて作るのです。

 カレン族の民族衣装のブラウスも、2枚の腰幅の布を左右に縫い合わせ、首の部分だけ開けた貫頭衣(かんとうい)風のものになっています。

モン(Hmong)族の麻布織り_織り人(Orijin)

 機織りの時期に、麻づくりのモン(Hmong)族の村を歩いていると、各家の軒先で機織りをしている様子がみられます。

「高機」で、カタンカタンと小気味よい音が聞こえてくるというのとは違うモン族の機織りですが、家の片隅で、静かにゆっくりと織られている様子は、とても落ち着く風景です。

モン(Hmong)族のお麻布織り_織り人(Orijin)

モン(Hmong)族のお麻布織り_織り人(Orijin)

©写真はすべて筆者撮影(2017年5月)/タイ北西部モン(Hmong)族の村にて
*「原始機(腰機)」で作った製品の製造販売をされている「Snow hand made」さんのホームページを参考にさせていただきました。